ゴルフコーチ
プロフィール
浜井 哲吉
ゴルフコーチ
ゴルフ界の定石にとらわれない身体の構造から作り上げられたスイング理論のもと、感覚と理論との両面でゴルファーをサポート。
http://hamai-golf.sports.coocan.jp
ゴルフコーチ 浜井 哲吉
「ゴルフコーチ浜井哲吉」のワンポイントレッスン
【取材】シンプルに考えれば、ゴルフはうまくなる
ゴルフコーチ
ゴルフスクール オン・ザ・グリーン代表
浜井 哲吉
<プロフィール>
1961年生まれ。大分大学工学部機会学科卒業。高校で数学の教員をしていたが、29歳でゴルフに出会い、転身。33歳でNGFゴルフ指導員の資格を取得、インストラクターとしてレッスン活動を開始した。2001年にはタイガー・ウッズの前ティーチングプロとして有名なブッチ・ハーモンからレッスンを受け、世界最高水準の指導法を学ぶ。2006年、トヨタゴルフにて新しいレッスンスタイルの「オン・ザ・グリーン」を開始。これまで1700名を超えるアマチュアを指導してきた。また各地で講演会やセミナーを開催し、プロ研修生、スポーツ指導者や経営者にメンタルトレーニングを通じて強いマインドの形成法「実力発揮脳」の作り方を伝えている。
「人に教える」とは
――浜井さんは、もともと高校で数学を教えておられたのですね。
そうなんです。数学の教員をしているときに、先輩に誘われてゴルフを始めました。最初は全然ボールが前へ飛ばなかったんですが、1度だけナイスショットが出た。それが忘れられず、また周りから「センスがいい」とおだてられて(笑)、ゴルフの魅力にとりつかれてしまいました。
始めたのが26歳のときで、100を切るまで2年半かかりました。
そのうちにゴルフが頭の中から離れなくなり、教員でいることが満足できなくなってきたんです。
それで、29歳のときに「人生は1回しかない。自分のやりたいことで生計を立てたい」と、教員を辞めて、愛知県のゴルフ場に就職しました。
もっとうまくなりたい。そう思っていろいろ教えてもらったり自分で情報を集めたりするうちに、「こうやれば結果がでる」ということがわかってきて、今ではアンダーパーでまわれるようになりました。
この方法は、自分の中だけで持っているのはもったいない。
こうやればうまくなるということを知って欲しいと思って、ゴルフを教えています。
――ゴルフを「する」ことと「教える」ことには大きな違いがあると思います。
「する」のは自分なので、自分が納得できればいいのですが、人に「教える」となると自分の思いは簡単には伝わりません。
特に技術は、言葉で伝えるのは難しいですね。
相手がイメージしやすいように、体や筋肉の動きを短いフレーズで伝えるようにしています。
自分の中で「どのフレーズならイメージできるかな」と練り上げて、それから伝える。
長い間教えているうちに、少しずつできるようになりました。
――「名選手は必ずしも名コーチにあらず」とよく言いますが、名選手が名コーチになるためには何が必要ですか?
名選手は、名コーチになれる素質はあると思います。
ですが、コーチが思い描いているイメージや理論を、選手に伝えるスキルがあるかどうかは、また別の問題です。
選手が聞く態勢、学びたい態勢になっていれば、たった一言で伝わることもあります。
名コーチになるには、コーチングや伝えるスキルをいろいろ勉強しなければなりません。
――理想のコーチングとは、どういうものでしょうか。
弟子が師匠を超える。これが理想だと思います。
師匠が弟子に「ああしろ」「こうしろ」というと、弟子は師匠のコピーでしかなくなります。
それでは絶対に弟子が師匠を超えることはできません。
弟子が自分で考え、自分で何かを見つけ、自分で向上するように師匠が導いてあげる。これが理想のコーチングだと思います。
そのためには形にはめず、「こういう方法もあるよ。でも私のいうことだけが正解ではない。別の答えがあるかもしれないから、自分で考えなさい」ということが大切だと思いますね。
ゴルフがうまくなるシンプルな考え方
――浜井さんは、レッスン中にどんなことを心がけて
おられますか?

ゴルフはちょっと考え方を変えたり、工夫したりするだけでうまくなる。そのことを伝えたいと思って教えています。
ゴルフは難しいと思われがちですが、実はうまくなるためのエッセンスは、そんなにたくさんあるわけではないんです。
野球、サッカー、バレーボールといった他の競技と共通した動きが多く、子供の頃から自然に身についた動きがゴルフのスイングに生かせることが多いんですよ。
にもかかわらず、それをせずに「ゴルフとはこういう動きだ」「トップの位置はここで、頭を動かさないで・・・・・・」という形だけを教え込まれ、無理してそれをやって苦しんでいる人がたくさんいると思います。
――ほとんどのアマチュアのゴルファーは、一生懸命に頭の中で動きを考えながらスイングしていると思いますが……。
それでは、身体は正しく動いてくれません。
「動き」よりも、「思い」の方が大事で、「思い」があれば「する」が「なる」に変わり、自然に正しく動けるようになるんです。
――「思い」が大事だというのは、具体的にはどういうことですか?
例えば、駅に向かって歩いているときに、電車の時間に間に合わないかもしれないと思ったら、自然に走り出しますよね?
そのとき、「脚はこうあげて」「ヒジの角度はこうで」と身体に「動き」の命令を出しているわけではありません。「速く走りたい」という「思い」があれば、自然にその動きになっているはずです。
ゴルフもこれと同じです。「トップの位置はここで、頭を動かさないで・・・・・・」と動きを命令しても、身体は反応してくれません。
「ボールを遠くへ飛ばすために、クラブを振りたい」という思いが大事なのです。それがあれば、他のスポーツで身体の中にプログラムされている動きが生きて、自然にスイングできるのです。
(詳しくは、動画「ワンポイントレッスン」をご覧ください)
――確かに、身体の動き一つひとつに命令を出してはいませんね。
例えば、右手を出して、親指の側に力を入れてみてください。入りますか? 多分、よくわからないと思います。
今度は、左手で右手を押して、右手はその左手を押し返してみてください。力が入りますよね?
それが、「右手の親指側の筋肉に力を入れる」ということです。
脳から「右手の親指側の筋肉に力を入れろ」という指令を送っても、その指示には反応できない。
脳からどういう指令を送るか、つまり自分がどういう「思い」を持つかが大事なんです。
「ボールを遠くへ飛ばすために、クラブを振りたい」という「思い」を持って、振ればいい。
そして、その1点に合うように、最初にボールをセットすればいいだけなんです。
だから、最初のセットはとても大事です。この部分だけは、自分で意識しなければなりません。
それさえできていれば、あとは自分の思いでクラブを振るだけで、自然にクラブが振られ、ボールに当たって飛んでいきます。
――では、その最初のセットで大事なことを教えてください。
それは、力を抜いてグリップを握ることと、バランスよく構えることですね。
(詳しくは、動画「ワンポイントレッスン」をご覧ください)
これが正しくできていなければ、振ったクラブはボールに正しく当たりません。
ボールを打つ前に、勝負は決まっているのです。
セットが正しくできていないのに、「トップの位置はここで、頭を動かさないで・・・・・・」とやってもダメなんです。
名コーチ ブッチ・ハーモンとの出会い
――なるほど。とてもシンプルだけど、すごく大事なことなんですね。

そうです。
僕は、このことをティーチングプロとして有名なブッチ・ハーモンから直接教わり、確信しました。
2001年に彼が来日した際にレッスンを受けたのですが、そこでまず教わったのは力を抜いてグリップを握るということです。
これについては、自分では50%くらいの力で握っていて、これでいいだろうと思っていました。
ところが、ブッチは「ノー、ノー。まだ固いよ」と言うのです。もっと柔らかく握っても「ノー。ノー」。ついに20%の力、これ以上ゆるいとクラブを落としてしまうという力で握ったら、「OK。グッド!」と言われました。自分で思っていたのと、ずいぶん差がありましたね。
もう一つ、フルパワーで振らなくてもよいということを教わりました。
当時、彼はタイガー・ウッズに教えていましたが、「タイガーは、フルパワーで振れば330ヤード簡単に飛ばすことができる。でもそんなに振ったら曲がるから、彼もフルパワーで振っていないよ」というのです。
それで、「75%の力でいい」と言われ、やってみると、フルパワーで振ったときと飛距離はさほど変わらないんですね。
目いっぱいの力で振らなくていいと思うと、心に余裕が生まれます。これが大事なんですよ。
――なぜ、心に余裕を持つことが大事なのですか?
緊張すると、足の裏の感覚がなくなるんですね。よく「地に足が着かない」と言いますが、その状態になってしまうと、バランスのよい構えができなくなるんです。
先ほどセットが大事というお話をしたように、このバランスが正しくないと、いくらいいスイングをしたとしてもボールに正しく当たりません。
――そのことをブッチ・ハーモンから教わったとき、どんな気持ちになりましたか?
そのとき、僕の中で世界が変わりましたね。このことを多くのアマチュアに伝えたい。そう思いました。
ですから僕のレッスンでは、あまり形やフォームについて細かくは言いません。
「スイングプレーン」といわれる平面から極端にクラブが外れている人には、「こうしましょう」とアドバイスしますが、それ以外は「それでいいですよ」と認めます。
そう言われて安心すると、スイングはよくなっていきます。
レッスンに来て「頑張らないと」とか「変なスイングをしてはいけない」と考えると、いいスイングはできません。
もともと他のスポーツで身につく自然な動きは、みんなが持っています。
それを「ああしなければ」「こうしなければ」と阻害しているのは、自分自身なんです。
「これでいいんだ」と認めることで身体の動きはスムーズになります。
――最後に、アマチュアゴルファーの皆さんにアドバイスをお願いします。

まず、心に余裕があり、力を抜いてグリップが握れて、バランスよい構えができることが前提です。
ゴルフ雑誌に書いてあることは正しいのですが、ほとんどはこの前提が抜けているんですね。
この前提ができていないのに、いくらゴルフ雑誌に書いてあることを実践しようとしても上滑りになってしまいます。
幹がしっかりしていないのに枝葉を伸ばそうとしても、苦労が多いわりに実りが少ない。
まずは、この前提をしっかりと自分のものにしてください。
次に、正しい動きを身につけることです。
「他のスポーツに共通する動きが生かせる」といいましたが、ゴルフ独特の動きもあります。
それは正しく身につけましょう。
そのためには「悪くクセ」をつけてしまわないように気をつけてください。
自分よりちょっとうまい人から習おうとする人が多いですが、その人のスイングが本当に素晴らしいスイングかどうかはわかりません。
これでは、勉強するときに不完全な教科書を使うようなものです。
不完全な人が不完全な情報を受け取ると、不完全さを増幅してしまいます。
やはり最初に正しい動きを習うことが重要だと思います。
ゴルフは、ちょっと考え方を変えたり、工夫したりするだけでうまくなります。
「下手だから」とあきらめずに、ちょっとしたことで進歩すると自分を信じてください。
そして、「思い」の部分を大事にして、こんな風にやったらゴルフがうまくなったと体感してください。
みなさんのゴルフは、まだ開花の途中です。これからどんどんうまくなると思いますよ。
<取材・文=スポーツライター 佐伯 要>
※浜井哲吉さんのホームページは、こちら
http://hamai-golf.sports.coocan.jp
